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「トヨタ生産方式」を読みました(事業承継マスターコースの課題図書)

 「ザ・ゴール」の記事を以前書きました。続編です。

 私の受講している事業承継マスターコースで、課題図書のリストから2冊を選んで感想を発表せよというクエスト。1冊目が「ザ・ゴール」、ということで2冊目です。

 2冊目は「トヨタ生産方式」。どちらも生産管理のカテゴリーの本でした。読みたいと思った本がこの2冊だったもので。結局ほかの人が感想を発表する本も読むのだから、別の本の発表にしてもよかったと、あとから思いましたよ。どんまい。

 

 

著者は大野耐一

 著者の大野耐一ですけれど、トヨタの副社長をやった人です。すでに故人。トヨタ生産方式を作り上げた人としてとみに有名。経営管理を勉強したら必ず出てきます、トヨタ生産方式

 「トヨタ生産方式」という本も有名。初版が1978年。古い本でも、売れ続けていてキンドルにもはいっています。

 私もそのうち読まねばならぬと思っていましたけれど、マスターコースの課題図書ということで読むいいキッカケになりました。

 

第1章にもいい話

 事業の後継者の方に推薦する書籍として読んでいますから、後継者の方に伝えたいことについて感想形式で述べて行きます。

 第1章のはじめは本書執筆の頃の話です。つまりトヨタ生産方式が優秀だという評価を得たあと、それまで見向きもされなかったのにどういう経緯で評価されるようになったのか、書かれています。

 

 トヨタ生産方式は高度経済成長が止まったとき、日本の産業は多品種少量生産で高コストであるところ、多品種少量でも低コストにしなければ生き残れない、という危機意識からスタートしています。実際、本書執筆のころはオイルショックで需要が減少しました。低成長時代に入ったと見られた。大量生産は在庫を抱えることになり、少量ではコスト高です。日本の産業はピンチ。

 現在の私たちも同じです。もう大量に作って大量に売るという時代ではありません。原価が上がり、でも価格はあまりあげられない。すこししか売れなくても、すこししか作らなくても、コストが低くて利益が出るという体質にならないと生き残れないでしょう。

 

 景気がよくてみんながのん気しているときに危機意識をもてたというところがポイントですね。凡人とはちがう。

 10年、20年先のことを考えて発言したり、世界規模のことを考えて発言したりすると、バカにする人がいます。まったく気持ちがわからないのですけれど。バカにしないまでも軽くとらえて聞き流すという人が多いことでしょう。

 たぶん、むづかしいからでしょうね。20年先のことなんて考えたってわからない、わからないから考えない。無駄だから。でも、無駄ではないのですね、おかげで大野耐一トヨタ生産方式に取りかかることになったのです。

 ほとんどの人は、20年先のことなんて考える必要もないかもしれません。当時の多くの経営者がなにも考えていなかったように。本当は経営者って考えるべき人たちでしたけれど。たまには先のことを考えたらよいでしょう。トヨタになれるかもしれません。

 

自分で考える

 トヨタにとって理想はジャスト・イン・タイムでした。必要なときに、必要なものが、ぴったり必要なだけある状態です。これは大野耐一の前から考えとしてありました。豊田喜一郎でしたか。

 大野耐一は自分で考えて、自分の権限の範囲ではじめます。イチ従業員から出発した現場主義のひとです。このあたり中小企業の創業社長みたいですね。

 

 第1章のタイトルは「ニーズからの出発」ですけれど、現場で課題を見つけて解決してゆきます。ニーズというのは現場の課題のことです。

 自分で課題を見つけて考え、解決策を見つけますから、現場の常識と衝突します。苦労をしたようですね。時間をかけてすこしづつジャスト・イン・タイムに向かって進みました。35年かかったと書いてあります。

 

必要ならやらなければならない

 多品種少量生産で平準化して作るとなると、段取り替えが頻繁に発生する。となると効率がさがるわけですけれど、それを許さない。段取り替えを早くしろと言います。

 時間のかかる段取り替えをできるだけすくなくして効率をあげようという常識に対して、段取り替えを増やせ、でも早くやって効率をさげるなという無茶な話。もちろんはじめは時間がかかるわけです。1回に2時間や3時間かかっていたのだとか。

 

 それが10年後には15分でできるようになり、さらに10年以上かかって3分で段取り替えができるまでになったそうです。すごすぎる。

 2時間も3時間もかかっていたものが3分でできるようになるとは、期待する方がおかしいと思いますけれど、必要があって取り組んだ結果として実現しました。多品種少量生産への執念です。

 

トヨタ生産方式のことだけではない

 ジャスト・イン・タイムは豊田喜一郎が提唱しました。自働化はそのまえの豊田佐吉が織機で実現していました。このふたりが、大野耐一の師匠のようなものでした。

 第2章ではトヨタ生産方式についてくわしく語っていますが、第3章は特に喜一郎の本を紹介しながら自動車産業の宿命と言うべきか、世界というか、自動車先進国アメリカへ対峙の仕方について語られます。

 第4章はアメリカのつづきでヘンリー・フォードについて書かれていて、フォードの本を引きながら、トヨタ生産方式に通ずるところ、アメリカの特性にあったところ、フォードの合理的な考え方について紹介しています。

 先達の業績や考え方に影響を受けたり研究したりしていたのだとわかります。参考にすべきロールモデルを見つけることは大切ですね。

 

ちょっとした苦言

 当時の経営者に対して、苦言を呈して本書を締めくくっています。

 目的(低コスト採算)、課題、解決方法がマッチしているのか。課題を無視して解決方法を取っていないか。そうすると目的に反することになるのではないか。と言っています。